ペグの形が問題になった!?製品開発時に注意しておきたい不正競争防止法!
キャンプ用品を展開するスノーピークは、山谷産業における「ペグ」の販売行為が不正競争防止法に違反しているものとして、当該ペグの販売差止め及び損害賠償の支払いを求めて東京地裁に提訴しました。
スノーピークは、 山谷産業の販売する「エリッゼステーク」 というペグがスノーピークの販売する「ソリッドステーク」 というペグに類似し(なお、類似以外の要件もあります。)、山谷産業の販売行為が不正競争防止法の2条1項1号に該当すると主張しています。
【ソリッドステーク】
【エリッゼステーク】
両者を比較すると、確かに似ていますね。ソリッドステークとエリッゼステークは、キャンパーの中では鍛造ペグの二大巨頭と言われるほど浸透しており、ペグ選びの際に度々比較対象として紹介されます。
スノーピークの主張が認められるためには、「ソリッドステーク」の形状がスノーピークの営業を表示するものとして認められた上で、需要者視点で「ソリッドステーク」との混同が生じている必要があります。
「ソリッドステーク」は1995年から販売されており、スノーピークの看板商品であると需要者に認識されている可能性が高いため営業表示として認められる可能性はあります。もっとも、ペグの紹介の際に「ソリッドステーク」と「エリッゼステーク」が比較対象として挙げられていることから、需要者視点で混同が生じているか否かという点については疑問が残ります。スノーピーク側はこの点についての立証が苦戦するのかなと思います。
実は「ソリッドステーク」は意匠登録されていました。現在は存続期間の満了(2012年)によって意匠権はありません。意匠権が存続していれば意匠権に基づいて権利行使をすることができました。
一方で、山谷産業は2013年から「エリッゼステーク」を販売しています。ちょうど「ソリッドステーク」の意匠権が消滅した頃ですね。これが意図的なものなのかどうかは不明です。販売開始直後にもスノーピークから山谷産業に対して一悶着あったものの、その時は提訴に至らず沈静化したようです。
しかし今回、コロナ化によるキャンプブームで「エリッゼステーク」の販売も好調になっており、スノーピークとしても見過ごせない形になったため、提訴に至ったのかなと考えられます。
不正競争防止法も商標法と同様に、売れていない時や人の目に触れる機会が少ないうちは問題になりにくいです。しかし、商品の形状や名称は一瞬で人の目に触れてしまうため、売れ行きが好調になってくるとすぐに目に入ってきます。売れ始めてからこうした知財絡みの問題が発生し、商品の販売ができなくなってしまうことは事業全体に関わる問題であることはわかると思います。そうならないためにも、走り出しの時点から知財を意識する(権利侵害調査、権利取得等)ことは事業の継続性・安定性を確保するためにも必要不可欠です。