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商標の更新を忘れるとどうなる?更新忘れの恐ろしい罠とは

 商標権は更新する必要があります。商標登録を受けた際に必ず行わなければならない更新管理。この更新を忘れるとどうなるのでしょうか?商標権の消滅?今回は、商標権の更新を忘れた場合のリスクについて話していこうと思います。

 商標権には存続期間があり、更新することで、半永久的に商標権を維持することができることを前記事「商標権って期限はあるの?商標登録の有効期間とは」で説明しました。この更新を忘れると、その商標権は消滅します。

 商標権が消滅するということは、その商標権にかかる商標は、誰もが使用できる商標になったということです。また、その商標は、第三者による使用に限らず、商標登録の要件を充たす限り、第三者が商標登録を受けることもできます。消滅した商標権にかかる商標を使用しているにもかかわらず、更新忘れにより商標権が消滅した場合のリスクとしては、この2つが大きいです。

 しかし、更新忘れのリスクは、これらのリスクだけに留まりません。

 あるお客様は、更新登録申請を忘れ、商標権が消滅してしまいました。商標権の消滅後、再度同じ商標について商標登録出願したところ、特許庁から審査不合格の通知が届いてしまいました。つまり、昔出願した時は審査合格だったのに、数年後に同じ商標を出願したら審査不合格になったということですね。前述のように、商標権の消滅後は、商標登録の要件を充たす限り、誰でも商標登録できるのでした。そうです、「商標登録の要件を充たす」か否かが問題になってきます。

商標登録出願の時期によって登録できるか否かが変わる理由

 商標は、登録後の管理が必要であることを当ブログ記事「登録商標は、登録後の管理をしないと危険です・・・」で説明しました。ここで、前記記事の内容を簡単に説明すると、商標登録を受けた後に、その登録商標を誰かが使用していたら、商標権者はその使用をやめさせるように努める必要があり、これを怠ると、その登録商標が一般名称化(その登録商標=商品自体の総称と認識されること)してしまい、その登録商標を無断で使用している第三者に対して権利行使が不可能になります。つまり、商標権があるにもかかわらず、その商標権に基づいて第三者による登録商標の使用を排除できなくなるのです。また、一般名称化した商標は、商標登録を受けることができません。

 そのため、商標登録後に登録商標が一般名称化してしまい、更新登録申請を忘れて商標権が消滅してしまうと、再度商標登録出願をしても商標登録を受けることはできません。なお、更新登録申請を行っていれば、更新登録申請時に商標の登録要件について審査されることはないので、商標登録は維持されます。

 もっとも、一般名称化してしまった商標に対して、更新する必要はあるのかという問題が生ずるものの、完全に一般名称化しているのか、それとも一般名称化に向かって進んでいる状態なのかによって変わります。一般名称化に向かって進んでいる状態なのであれば、更新登録申請を行い、第三者の無断使用を制限し、完全に一般名称化してしまうのを防ぐという方策を採ることはできます。これにより、一般名称化を防ぐことができれば、商標権者は、第三者による無断使用を防ぐことができます。一方で、完全に一般名称化してしまっている場合は更新登録申請を行っても、第三者による商標の使用を防ぐことはできません。

 更新登録申請を忘れた場合のリスクとしてはこういったケースも存在します。かなり残念なケースといえますね。商標登録を受けた人は、更新登録申請の時期について、しっかりと管理すると共に、第三者による登録商標の使用を防ぐことで一般名称化を防ぐことも非常に重要であることを頭に入れておきましょう。一般名称化に関しては、先ほども紹介したとおり、当ブログ記事「登録商標は、登録後の管理をしないと危険です・・・」をご覧いただければと思います。