Facebook社名変更!身近な事件から商標法を知ろう
米国のIT企業「Facebook」が、2021年10月28日に社名を「Meta(メタ)」に変更しましたね。本記事では、社名変更に基づいて発生するリスクを商標法の観点からお話ししていきます。
リブランディングは、商標登録に取り組まないことの大きなリスクの一つです。商標登録に取り組まないことによって、自社商標が他人に登録されていたことを後から知るケースは非常に多く、このような場合、リブランディングの必要性が生じます。最初から商標登録に取り組んでいれば10万~20万円程度で済んでいたのに、リブランディングにかかるコストは100万を超える可能性もあります。
「リブランディング」と聞くと、みなさんはどのようなリスクを思い浮かべますか?Webサイト、看板、各種営業資料等の作り直しはもちろんのこと、リブランディングにかかるリスクはそれだけに留まりません。
リブランディングにかかる最大のリスクとは
リブランディングにかかるリスクの前提として、ブランディングの本質は何かという点について少し触れておく必要があります。
商標をつけた商品を消費者が購入し、その商品自体の品質が高い場合や満足のいくサービスが提供された場合、消費者は、商標を手掛かりとして、その商品を再度購入しようとします。つまり、消費者は、その商標がつけられた商品であれば、一定の品質が担保されていると考えるわけです。これを商標法では、「商標に信用が蓄積する」といいます。商標法では、形式上は商品に使用する「商標」を保護しているものの、本質的には「商標に蓄積した信用」を保護しています。
では、商標を変更した場合はどうなるでしょうか?
消費者は、商品につけられた商標を手掛かりとして、一定の品質が維持され商品を繰り返し購入しようとするため、その商標が変更されてしまうと、変更前の商標に蓄積していた信用がなくなってしまいます。つまり、変更後の商標に変更前の商標の信用は残らないということです(もちろん全てではありませんが。)。その結果、既存顧客が離れてしまう原因となってしまうのです。したがって、「商標に蓄積していた信用がなくなる」というのがリブランディングの最大のリスクです。
今回の「Facebook」の問題は、商標の変更ではないものの、「Facebook」という社名表記は、営業表示として機能しており、商標として使用されている場面も多くみられるので、信用が蓄積しているといえます。「Facebook」に化体した信用をリセットし、新たな名称「Meta」に対して、「Facebook」と同程度の信用を蓄積させるには多大なリソースがかかってしまいます。
「Facebook」のような有名企業であれば、メディアに取り上げられる機会も多いため、社名変更の事実を周知にし、「Facebook」に蓄積していた信用が一定程度「Meta」に転移する可能性もありますが、通常であればこのようなことは起こりえないと考えます。
市場の変化、時代の変化等により、ブランド再構築の必要性はいつでも生じ得るものの、リブランディングは、現状のブランド戦略とリブランディングリスクとリブランディング後のブランド戦略とを俯瞰してみた上で冷静に行う必要がありますね。
もっとも、商標登録に取り組まないことによる意図しないリブランディングは極力避けるべきでしょう。