Re就活とリシュ活は似ている?商標の類否判断とは
「Re就活」と「リシュ活」を巡る争いにおいて、和解するとのニュースが2021年11月13日ありましたね。今回は、当該事案を例に、商標の類否判断は、どのようになされているかというのを簡単にご説明します。
まず、みなさんは、商標「Re就活」と商標「リシュ活」を見たときに、似ていると感じるでしょうか?「見た」というのはぱっと見の印象です。「Re就活」と「リシュ活」は、「活」以外の文字に共通点はなく、一方は語頭にアルファベットが使われているという差異、及びカタカナと漢字との差異があるため、似ていないと考えます。
次に、「Re就活」と「リシュ活」を言葉で聞いた時のことを想像してください。発音的には、「Re就活」は「リシュウカツ」と読むのに対し、「リシュ活」は「リシュカツ」と読むと思います。「Re就活」の発音には「ウ」が含まれているのに対し、「リシュ活」の発音には「ウ」が含まれていないという差異はあるものの、なんとなく似ていると感じる方もいると思います。
更に、商標同士の類否判断では、商標自体が生ずる「観念」(言葉が持つ意味合い)を要素に含めることもあります。「Re就活」は「就活」部分を切り取って考えると就職活動という観念を生じます。しかし、「リシュ活」は造語であって、特定の観念を生じません。したがって、比較対象となる一方の商標に観念が生じないため、両商標の観念を比較することができず、観念は、上記事案における類否判断の要素に含まれていないと考えられます。
このように、商標の類否は、外観(見た目)、称呼(呼び方)及び観念(意味合い)という要素から判断されます。
上記事案の結果としては、「Re就活」と「リシュ活」は、称呼の点で聞き間違える可能性を否定することはできないものの、外観が大きく異なることから、商標全体として似ていないものとして認められました。
「Re就活」と「リシュ活」は、就職活動サービスの名称であって、サービスの利用はWebサイトで行われていることから、視覚的な影響の大きい「外観」のファクターが類否判断に大きく影響したものと考えられます。仮に、サービスが、ラジオ等の音によって提供されることが多い場合は、称呼のファクターが類否判断に大きく影響する可能性もあります。このように、商標の類否は、外観、称呼、及び観念を基本的な判断要素としつつ、取引の実情をも考慮した上で判断されることがあります。
商標が類似しているかどうかという判断は、プロダクト名を決める際に既に登録された商標と似ているかどうかを確認する際や、自分が商標を登録する場合に他人の先登録商標を調べる際等、様々なシーンで行う必要があります。自社のプロダクト名が、他人の商標と全く同じではなくても、似ていると判断されれば商標権を侵害することになり得るということは頭に入れておいて頂きたいです。