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アイディール通信

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事業を始めたが他人の商標登録をみつけてしまった・・。実はiPhoneもそうだったのです。

 事業を開始し、商品又はサービスの名称を決めた後に他人の商標登録がみつかってしまった。この場合、商品又はサービスにその名称を使用すると他人の商標権を侵害することになります。事業を開始してから時間が経てば経つ程その傷は深くなります。

 先日、Apple社による「iPhone」という名称の使用対価は年1・5億円という記事をみました。商標の世界では結構有名な話しですが、久しぶりに思い出したので記事にしたいと思います。

 Apple社は、日本での「iPhone」の販売を予定していたところ、「iPhone」という名称の使用が権利範囲に含まれる登録商標が存在していました。この登録商標は、アイホン株式会社の登録商標「iPhone」であり、指定商品又は指定役務が「ゲーム機能を有する携帯電話機,携帯電話,携帯電話の部品及び附属品,テレビ電話,インターネット接続機能・電子メール送受信機能・映像及びデータ情報送受信機能を有する携帯電話機」です。Apple社が「iPhone」の商標を携帯端末に使用した場合、アイホン株式会社の権利を侵害してしまいます。

 では、なぜApple社は「iPhone」の販売を行えるのか?

 現在の登録商標「iPhone」にかかる商標権者は「アイホン株式会社」です。商標法には、権利者をそのままにして他の事業者に商標を使用させることができる制度が規定されています。これにより、Apple社は携帯端末に対して商標「iPhone」を使用してもアイホン株式会社の商標権を侵害しません。

 他の事業者に商標を使用させることができる権利を使用権といいます。使用権は2種類あり、商標法第30条と商標法第31条に規定されています。
 商標法第30条第1項は、「商標権者は、その商標権について専用使用権を設定することができる。ただし、第四条第二項に規定する商標登録出願に係る商標権及び地域団体商標に係る商標権については、この限りでない。」と規定しています。
 商標法第31条第1項は、「商標権者は、その商標権について他人に通常使用権を許諾することができる。」
 このように、商標法には通常使用権と専用使用権が規定されています。

 通常使用権は、第三者に商標を使用させることができる権利です。通常使用権が与えられた者は、適法にその登録商標を使用することができます。登録商標を使用しても権利者からの権利行使を受けないという点が主なメリットであり、複数の第三者に設定可能です。なお、通常使用権の設定時に登録商標の使用条件(使用可能期間等)を課せられるのが一般的です。
 専用使用権は、第三者に商標を使用させることができ、設定を受けた第三者は適法に登録商標を使用することができる点で通常使用権と共通します。一方で、専用使用権は、複数の者に設定することが不可能であるどころか、登録商標の権利者であっても登録商標の使用をすることができなくなります。つまり、専用使用権者しか登録商標を使用することができなくなります。

 Apple社はアイホン株式会社から専用使用権の設定登録を受けています。なので、「iPhone」という商標は、アイホン株式会社を含む第三者の使用が禁じられています。このライセンス料が年間1・5億円だそうですね。登録商標一つのライセンス料でこの莫大な金額が得られる例はほとんどありません。稀に流行り言葉や他人の商標を先取り的に登録し、その商標を販売するといった商標ビジネスを行っている方がいますよね。制度的にはアイホン株式会社の例と同じように、使用権を設定し、商標ビジネスを行っている者がライセンス料を得るということも可能ではあります。
 最近話題になった例だと、「ゆっくり茶番劇」があります。あの商標も当初、年間の10万円のライセンス料が決められていて、使用するならライセンス料を請求するということが出願人のTwitterアカウントで発表されていました。ライセンス料を払えばだれでも使用可能であることから、商標法第31条第1項に規定する通常使用権を設定する予定だったものと考えられます。