優秀な商標とは?
商品名(商標)は、消費者と商品との最初の接点であり、重要な第一印象です。そのため、商品の特徴を示す用語を商品名として使用することで、消費者に対して、手に取った商品にどのような特徴があるかを認識させることができます。しかし、商品の特徴を単に示す名称は、商標登録に適さないことを前記事で説明しました。そこで、今回は、商品の特徴を示しつつ、商標登録に適した優秀な商標をご紹介します。前記事をまだ読んでいない方は、前記事「商標登録に適さない商品名(サービス名)とは)」を読んでから本記事を読むことをお勧めします。
前述のとおり、商品の特徴を示す用語を商品名として使用することで、消費者に対して、その商品がどのような商品であるかを認識させることができます。例えば、台所用スポンジという商品に対して、「汚れ落とし」、「クリーナー」、「スポンジ」等は、商品「台所用スポンジ」の特徴を単に示すものです。このような名称は、商品の特徴を示すものであるため、商品を手に取った消費者にどのような商品であるかを一発で認識させることができます。
もっとも、このような商品の特徴を単に示す名称は、商品選択の際の目印としては機能せず、商標登録に適さないばかりか、目印として機能しない結果、その名称自体が事業の前推しを阻害する可能性もあります。
優秀な商標とは?
この記事において、優秀な商標とは、商品の特徴を表現しつつ、消費者による商品選択の際の目印として機能する名称と定義します。以下に3つの例をご紹介します。
「激落ちくん」は、台所用スポンジに対してつけられた商標です。「激落ちくん」は、「激落ち」という部分が、食器汚れをごっそり落とせますという商品特徴を抽象的に表現しており、「くん」をつけることで、何らかのキャラクターであることを想起させています。すなわち、「激落ちくん」という商標は、食器汚れを落とすキャラクターというコンセプトで商品の特徴を表現しています。そのため、「激落ちくん」は、商品特徴を抽象的に表現しつつ、商品選択の際の目印として機能するので、優秀な商標といえます。
「キュキュット」は、食器用洗剤に対してつけられた商標です。「キュキュット」は、食器洗い後にお皿を擦った時の擬音を表しています。これをみた消費者は、「キュキュット」の洗剤は、食器洗い後にキュキュッという音が鳴るくらい油汚れがしっかりと落ちることを想像します。「キュキュット」は、キュキュッという擬音によって商品特徴を消費者に対して認識させつつ、商品選択の際の目印として機能するので、優秀な商標といえます。
「熱さまシート」は、保冷具という商品に対してつけられた商標です。「熱さまシート」は、「熱さまし」と「シート」とを掛け合わせた造語であって、熱を冷ますためのシートという商品特徴を表しています。「熱さまシート」は、上記2つと比して、商品特徴を単に示す名称に近いものの、「熱さまシート」が「熱さまし」と「シート」とを掛け合わせた造語である点がポイントです。「熱さましシート」は、「熱さまし」と「シート」とを掛け合わせることで、商品特徴を消費者に対して認識させると共に、造語であることで商品選択の際の目印として機能するので、優秀な商標といえます。
もっとも、「熱さましシート」だった場合は、商品の特徴を単に示すものとして、商標登録に適さない名称に分類されます。
いかがでしたでしょうか?上記3つの優秀な商標の共通点としては、商品の特徴をストレートに示すのではなく、人が商品を手に取った時に、その商品の特徴が一発でわかるように「抽象化」して表すことです。また、商品のキーコンセプトを表す商標は、消費者に商品の効果や機能等を想起させることで購買意欲を喚起させると共に、その商標の印象から消費者の記憶に残りやすいため、事業を前推しする手助けにもなります。