商標の印象付けを最大化しよう!スターウォーズのロゴマークからみる商標法
先日、面白いツイートがバズっているのをみかけました。ツイートは以下のものです。
みなさんはこれがなんのロゴマークかわかりますか?ちなみに私は10秒後くらいに気づきました(笑)この店舗マークはスターウォーズのロゴマークの輪郭です。
なお、こちらがスターウォーズの文字入りロゴマークです。
私自身スターウォーズをみたことがないので登場人物やストーリーにさほど詳しくありません。しかし、スターウォーズを知らない私やコメント欄の方々であっても、このロゴマークがスターウォーズだと気づいている方は結構いたようです。この輪郭が人に与える強い印象って凄いですよね。このように輪郭のみでスターウォーズだとわかる商標の使い方は、商標を活用したブランド戦略的には非常に良いことなのです。
何がいいの?
話しの大前提として、商標法について少し触れる必要があります。
まず、商標法の規定上、商標権者は登録された商標と同じ商標を独占的に使用する権利が得られます。これは登録商標と全く同じ商標の使用をよしとするものですね。この権利(商標法上「専用権」といいます。)によって商標権者は、登録商標と同じ商標を使用する第三者に対して権利行使をすることができます。
ここで疑問になるのが、登録商標と全く同じ商標に対してでなければ権利行使をすることができないのか?という点です。
答えはNOです。商標法では専用権の他に、禁止権という権利が規定されています。禁止権は登録商標と紛らわしい商標の使用を禁止する権利です。そのため、商標権者は登録商標と全く同じ商標を使用する第三者のみならず、登録商標と紛らわしい商標を使用している第三者に対しても禁止権に基づいて権利行使をすることができます。
ここで専用権と禁止権という言葉がでてきましたが、商標法上、商標権者によって積極的に独占使用が認められているのは専用権(登録商標と全く同じ商標)の範囲の使用であって、禁止権の範囲における使用(登録商標と紛らわしい商標)は積極的に独占使用が認められているものではないのです。商標法上に明文の規定がないということです。もっとも、禁止権の範囲における登録商標の使用は商標権者による権利行使の対象になるため、第三者は禁止権の範囲における商標の使用をすることができない一方、商標権者は禁止権の範囲における商標を誰からの制限を受けることなく使用することができます。このように、禁止権の範囲における商標権者による商標の使用は、禁止権の範囲における商標の第三者による使用が制限されることで事実上独占的に使用できる状態になっているにすぎず、商標法上の規定により積極的に独占使用が認められているものではないのです。
このように規定されている背景には商標法の考え方が重要になってきます。
商標法では商標登録を受けた者に対して商標権が与えられます。つまり、商標が保護されています。しかし、実は商標法の考え方的には商標法上で保護すべき対象として認められているのは「商標」ではないのです。なにいってるのかわからないですよね。
まず商標というのはなぜ使用されるのかご存知でしょうか。なぜみなさまは商標をつけるのですか?なんとなく?みんながつけているから?
商標を付ける理由は、同種商品・同種サービスからお客様に区別してもらうためです。世の中には同じ商品や同じサービスがあふれています。これらに事業者を識別するための標識がなければお客様は所望する事業者の商品やサービスにたどり着けないわけです。だから商標をつけるんですよね。
お客様は商標を頼りに商品・サービスを選択します。コンビニもそうじゃないですか?好きなコンビニありますよね。コンビニに名前やロゴマークがなければ、入店したコンビニがファミマなのかローソンなのかわかりませんよね。だから、コンビニに名前やロゴマークをつけるのです。同種商品・同種サービスから事業者を区別して選択するためです。
みなさんにはお気に入りの商品やサービスはありますか?私はコンビニでいうとセブンイレブンが好きです。大体何でも美味しく感じるし、価格もリーズナブルだからです。携帯電話やPC等のデバイスでいうとApple製品が好きです。製品そのものの品質も高いですし、AppleCare等のサポート体制の質も高いからです。あと製品外観も好みですね。そのため、セブンイレブンの新商品やコラボ商品、Appleの新製品等に対しては厚い信頼があります。
このように、私を含め消費者は繰り返しその商標がついた商品・サービスを同種商品・同種サービスから区別して選択することでその商標をつけている事業者を信頼しますよね。つまり、商標に対してお客様の信頼が蓄積していくのです。とりあえずセブンイレブンいけばなんでも美味しい!とか携帯はAppleに限る!といった方々は私以外にもたくさんいると思います。この商標がついている商品なら間違いないとか、この商標がついているサービスの品質は高いだろうというお客様の評価は、お客様の商標に対する信頼に基づくものです。
商標法は、この「信頼」こそ保護に値するという考えがあります。しかし、信頼を直接保護することはできないですよね。だから、商標を保護することを介して、商標に蓄積した信頼を保護対象としているのです。
お客様の信頼は、商標が商品・サービスに使用されて初めて蓄積するものです。では、その商標の使用態様が様々であった場合はどうでしょうか?例えば、セブンイレブンの看板につけられた色が紫、オレンジ、赤で構成されているとか、名前がセブントゥエルブとか。もうセブンイレブンかどうかわからないですよね(笑)このように、商標が常に変形して使われてしまうとお客様が所望する事業者の商品にたどり着けなくなってしまうのです。商標は同種商品・同種サービスからお客様が区別するための目印ですから、その目印をむやみに変形することは商標の目印としての機能を弱めてしまうのです。商標の目印としての機能を弱めてしまう結果、消費者は同種商品・同種サービスから自社商品を区別することができず、商標に信用が蓄積しません。
そのため、商標に対して信頼が蓄積していくという商標法の考え方的には、原則として使用し続ける商標は一つ、つまり、「専用権」の範囲における登録商標と同一のもののみを使用しなさいということです。この考え方でいうと、真に保護価値がある商標は登録商標と同じ商標のみということになるため、専用権の範囲の使用は商標法上積極的に認められているのです。一方、登録商標と全く同じ商標のみを保護対象とした場合、商標を少し変形すれば権利侵害を回避できることになってしまうため、商標の保護が不十分になってしまいます。そのため、商標法では登録商標と紛らわしい商標を禁止権によって排除するという法制度になっています。登録商標と紛らわしい商標を第三者に使用されてしまった場合は、お客様が求める事業者の商品・サービスにたどり着けなくなってしまいますからね。仮に間違えた商品が粗悪品であり、お客様が間違えたことに気づけなかった場合は、正しい事業者の信頼を傷つけることになってしまいます。
前置きが長くなりましたが、要は基本的に登録された商標をそのままの形で使い続けましょうねってことです。スターウォーズのロゴマークはほぼほぼ上の文字入りロゴマークが使われています。このロゴマークによってスターウォーズを常に表現することで、文字が入っていなくてもその輪郭のみでスターウォーズのロゴマークだと認識することができるのです。もちろん、名刺やHP等のスペースに制限があるときは仕方ない部分もあります。しかし、極力登録商標と同じ形で使用し続けることでお客様に印象付けやすいということは覚えておいて損はないと思います!