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地域ブランドを保護しませんか?地域団体商標とは

先日、「あおもり藍」が地域団体商標に登録されたとのニュースをみました。あおもり藍は青森県産の藍を用いて染色をした生地、織物、被服等をいいます。地域団体商標は、通常の商標よりも登録要件が厳格であり、「あおもり藍」の商標登録については出願から約7年も要しています。

地域団体商標制度は、地域の特産品等について使用される地域ブランドを保護し、地域経済の活性化を目的としています。地域団体商標は、地域ブランドとして用いられることが多い地域の名称及び商品の名称等からなる文字商標を指します。地域団体商標としては、沖縄そば(商標登録第5008493号)、十勝和牛(商標登録第5443137号)等があります。商標「沖縄そば」は小麦粉を使用した沖縄県産のそばのめん、商標「十勝和牛」は北海道産の和牛の肉を指定商品又は指定役務としています。

地域の名称及び商品の名称等からなる文字商標については、商標法第3条第1項の規定により商標登録を受けることができません。このような文字商標は、その商品やサービスの一般的な名称であり、事業者を区別する標識として機能しないことに加え、一事業者による独占に適さないものです。なお、商標法第3条第1項に該当する商標であっても、その商標が使用された結果、全国的に認知され、特定の事業者を区別することができれば、例外的に商標登録を受けることができます。これに対して、地域団体商標制度において要求される知名度は全国的なレベルよりも低いものとされ、一定の周知性を有した商標であれば商標登録を認めるものであり、知名度においては商標法第3条第2項の規定よりも緩和されています。

前述のとおり、商標法第3条第1項に該当する商標は、原則的に商標登録を受けることができないため、従来、地域の名称及び商品の名称等からなる文字商標は、商標法第3条第2項の適用を受ける以外に商標登録を受ける方法がありませんでした。そのため、他の事業者がその地域ブランドの商標を用いて商品の販売やサービスの提供をしていても、その行為を制限することができませんでした。これでは、地域ブランドを保護することができません。このような背景から、地域団体商標制度が規定されました。

地域団体商標として商標登録されるためには、①商標法で規定された団体であること、②この団体の構成員に使用させる商標であること、③地域の名称及び商品の名称等のみからなる商標であること、④地域団体商標にかかる商標登録出願前からその地域の名称と商品との間に密接な関連性があること、⑤周知性を有することが要求されます。

地域団体商標「あおもり藍」は出願から約7年経過した後に商標登録されています。この間に、出願人には様々な書類の提出を要求されていました。
①実際に取引をしていることが把握できる資料
②指定商品が青森県のみならず、県外にも流通していることを示す資料
③本願商標の使用開始時期を示す資料
④指定商品の生産量や出荷量が把握できる資料
⑤直近数年間の指定商品の流通先が把握できる資料
⑥本願商標が使用された指定商品が出願人等の商品であるものとして、宣伝、広告されたことが把握できる資料

特許庁のデータベースで商標に関する情報は遡って見ることのできる資料に限界があるため、一部しかわかりませんが、①~⑥は地域団体商標としての登録適格性を判断する資料として要求されているようでした。

地域団体商標「あおもり藍」に関しては、審査過程で苦戦している様子が伺えますが、全ての地域団体商標にかかる出願がこのような過程を経て登録になっているわけではありません。先ほど紹介した商標「沖縄そば」は1年もかからずにすんなりと登録になっています。地域団体商標は、地域の活性化を目指す事業者にとっては必須です。ぜひ、挑戦してみてください。