Column

アイディール通信

  1. HOME
  2. コラム一覧
  3. 商標
  4. ECサイトにおける商標的な問題

ECサイトにおける商標的な問題

 近年急成長しているEC市場。スマートフォンの普及に加えてコロナ禍が追い風となり、楽天、Amazon、ZOZOTOWN、Yahoo!ショッピング等のECサイトで商品を購入する人が急増しています。ECサイトで商品を購入すると様々な特典があり、これがとにかく魅力的。特にYahoo!ショッピングのPayPayボーナスは実質的にかなりお得に商品を購入できるそうですね(私は利用したことがありませんが)。更に、最近では宅食サービスなるものも普及しはじめ、自宅で商品の購入し、家まで届けてもらえるという形が日常になりつつあります。

 ですが、ECサイトで簡単に商品のネット販売が行えるようになったため、ECサイトでの商品販売が増加した一方、これに伴う問題点も多く発生しているようです。

 ECサイトで多い問題について

 ECサイトではECサイトで商品の販売を行う出品事業者の商標問題が多く発生しています。ここでいう商標問題は、自社商標を他社が勝手に使用していることを指します。
 このような場合、ECサイト側が対応してくれるか否かは、そのECサイトによりますし、対応の内容も様々です。場合によっては、当事者間の問題は当事者同士で対処してくださいとの返事がくることもあるようです。

 もっとも、ECサイトを提供する事業者としては、出品事業者同士の商標問題を放置してもよいのかという問題があります。
 この点については、「ウェブページの運営者は、商標権者等から商標法違反の指摘を受けたときは、出店者に対しその意見を聴くなどして、その侵害の有無を速やかに調査すべきであり、これを履行している限りは、商標権侵害を理由として差止めや損害賠償の責任を負うことはないが、これを怠ったときは、出店者と同様、これらの責任を負うものと解される」(平成24年2月14日知財高裁判決)とされています。
 少なくとも出品事業者から商標権侵害についての指摘があった場合は、ECサイトの事業者はその商品が出品事業者の商標権を侵害しているかの調査をする必要があり、これを怠ると出品事業者と同様の法的責任を負うものとされています。

 また、商標の場合は、商標権侵害を構成する商標の使用態様で出品事業者が商品の販売をしているのか?という点も問題になります。

 商標権侵害を構成する商標の使用というのは、商標法上「商標的使用」と呼ばれます。商標的使用とは、自社商品と他社商品を識別するための標識として商標を使用していることをいいます。例えば、ECサイトで販売する商品の名称として他社の登録商標を使用している場合はどうでしょうか。その商標にかかる商標権を保有する事業者(正規の事業者)とECサイトで他社商標を使用している事業者は異なることになりますよね。しかし、この商品をみた消費者は、その商品の名称に用いられた商標をみて、正規の事業者が販売している商品であると勘違いすることになってしまいます。そのため、消費者は自分が買おうと思っていた品質の商品とは異なる商品を買うことになってしまいます。この勘違いが生まれる商標の使用方法が商標法上の商標的使用にあたります。なので、この例では商標権侵害を構成します。

 一方で、その商標が商品の名称として用いられているのではなく、商品紹介の一部に「ブランド○○用の商品です。」と記載され、その他「純正品よりも高品質」等と記載されていた場合はどうでしょうか。○○には他社の登録商標が入ります。この場合、「用」と記載されていることから、その商品の対応機種を示していると解釈でき、また、純正品と比較した記載があることから、純正品ではないものとして認識できますよね。従って、「ブランド○○用の商品です。」と記載された商品は、ブランド○○の事業者が販売している商品だと消費者が誤認する可能性は低く、商標的使用にはあたらないとされています。もちろん、商標的使用に該当するか否かは個別具体的な判断が必要ですので、この例に当てはまれば全て商標的使用が否定されるというものではなく、商標的使用の説明にかかる一例にすぎません。

 そのため、単に登録商標が記載されているからといって直ちに商標権侵害を構成するとは限らないのです。これを利用して商標的使用に該当しない態様で商品の販売をしている出品事業者も存在し、このような場合は商標権に基づいて商標の使用を制限することができません。もっとも、商標的使用にあたらないということは消費者が登録商標を保有する事業者とは別の事業者の商品であると認識できていることになるのでさほど問題ではないと考えられます。そうだとしても、消費者の勘違いが生まれる可能性が少しでもあるような態様で自分のブランド名称を書かれるのは嫌だと思いますが、、

 また、ECサイトでは同じ商品が異なる事業者から販売されるケースが多く、自社で作成した商品の写真を勝手に使用されてしまうケースもあります。このような場合はその写真にかかる著作権の問題も発生しますし、商品に加えて人も映り込んでいる写真を用いた場合、肖像権の問題にもなってきます。近年流行している様々なECサイトではこのような問題を全て解消することは難しく、放置されている場合も多いです。

 Amazonにはブランド登録がある!

 Amazonでは、Amazonブランド登録という制度があります。Amazonブランド登録には、様々なメリットがあります。

 例えば、Amazonには知的財産権侵害についての申し立て制度があります。知的財産権侵害についての申し立ては「著作権や商標権などの権利者又はその代理人が、Amazonサイトでその権利を侵害されたと思われる場合に、その旨を申告するためのものです」(Amazonサイト引用)。Amazonブランド登録をしていると権利関係がはっきりするため、知的財産権侵害についての申し立ての申請が通りやすくなるようです。つまり、自社商標を使用している第三者に対して、Amazon側が警告等により対応してくれるということですね。この制度はECサイトを利用する出品事業者としてはかなり安心できるのではないでしょうか。また、Amazonブランド登録をすることでストアページを構築することができます。ストアページでは自社ブランドの商品のみを掲載することができます。
 このように、Amazonブランド登録という制度があることでAmazonは他のECサイトに比べて出品事業者のブランディングがしやすいものとなっています。

 Amazonブランド登録をするためには、商標登録が条件となっています。商標登録を行う際に注意してほしいのが、指定する商品・サービスです。指定商品・指定役務は商標権の権利範囲を決めるものですので、これが自分の販売する商品と合っていなければ商標登録を受ける意味がなくなってしまいます。また、商標登録を受けようとする場合、商標登録出願をしてから約11か月後に審査結果が来るので、商標権を取得するまでに結構時間がかかります。審査結果を早くもらう方法としては約2か月で審査結果が来る早期審査制度や約6か月で審査結果が来るファストトラック制度がありますが、それぞれ一定の要件がありますので専門家と相談して各制度が適用可能かどうかを判断することになります。
 もっとも、最近では商標登録出願中でもAmazonブランド登録を行うことができるとされているため、商標権の取得を急ぐ理由が特になければ通常の審査でも問題ないかと思います。
 ECサイトで商品販売を行う事業者さんは、ぜひAmazonブランド登録をしてみてはいかがでしょうか。