登録商標は正しく使っていないと取り消されます!
商標登録を受けることで、他人による自社商標の使用を排除することができ、その登録商標を半永久的に使用することができます。しかし、登録商標の「使い方」によっては、その商標登録が取り消される可能性があります。
商標法には、「不使用取消審判」という制度があります。不使用取消審判は、使用していない登録商標を第三者の請求により取り消すことのできる制度です。
みなさんは、登録された商標をそのままの形で使用していますか?おそらく、パンフレット、名刺、HP等、商標を使用する場面によって多少の変更があると思います。ここで、登録商標に多少の変更を施した商標の使用が、不使用取消審判でいう登録商標の「使用」にあたるかどうかが問題となります。多少の変更を加えているということは、登録商標と同一ではないということになりますからね。もし、多少の変更を加えた商標の使用が、不使用取消審判でいう登録商標の使用に当たらない場合、その商標登録は不使用取消審判の対象となってしまいます。
この点に関して、商標法では、登録商標と全く同一ではなくても、社会通念上同一の商標と認められるものであれば、例外的に登録商標の使用として認められることが規定されています。では、社会通念上同一の商標とは、どんなものがあるのでしょうか。
社会通念上同一の商標と認められる例
●書体にのみ変更を加えた同一の文字からなる商標
永い春(明朝体) ↔ 永い春(ゴシック)
●平仮名の文字の表示を変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標
ちゃんぴおん ↔ チャンピオン
アップル(あっぷる) ↔ apple
社会通念上同一の商標と認められない例
●外来語等で相互に変更することにより、特定の観念(文字の意味合い)が失われ別異な観念が生ずるとき
チョコ(チョコレートの略称) ↔ ちょこ(猪口)
●称呼が相違する場合の漢字とローマ字の相互間の使用
音楽 ↔ music (ミュージック ↔ musicであれば同じ称呼なのでセーフです。)
このように、不使用取消審判における「使用」の定義に該当するか否かの判断に際し、登録商標に対する使用態様について多少の変更は許容されてはいるものの、あくまでも例外的に登録商標と同一ではない商標の使用を不使用取消審判における使用として認めるものです。なので、商標登録を受けた後は、なるべく登録商標と同じ形で商標を使用すべきであります。また、商標登録出願を行うときにも、最も使用頻度の高い商標の形で出願する商標を選択すべきです。
もっとも、不使用取消審判は、自身が特許庁に対して請求することもできるので、自社商標が既に登録されている商標と紛らわしい場合、その商標について商標登録出願をしても、本来的には商標登録を受けることはできませんが、先登録された紛らわしい商標が不使用取消審判によって取り消される商標なのであれば、その登録商標を取り消すための不使用取消審判を特許庁に対して請求し、自分が商標登録を受けることもできます。