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「それってパクリじゃないですか?」 パロディと商標との関係性とは

 芳根京子さん主演の連続ドラマ「それってパクリじゃないですか?」の第二話では、商標のパロディをテーマとしていました。パロディ商標の問題に関してはドラマの世界に限ったものではなく、現実の世界でも度々話題になります。パロディ商標は、元となる商標を少しいじって面白くしたもの等を指します。元となる商標が登録されていれば、その登録商標の権利範囲に含まれるパロディ商標の使用は商標権侵害となります。なお、パロディ商標が全て元となる商標に係る商標権の権利範囲に含まれるわけではなく、パロディ商標と登録商標が類似の範囲にあれば商標権の権利範囲に含まれることになります。

 特許庁の審査段階では、商標法審査基準に則って商標の類否が判断され、裁判所における商標の類否判断においても概ね商標法審査基準と同様の手法で行われます。
 商標法審査基準において、商標の類否判断は「出願商標及び引用商標がその外観、称呼又は観念等によって需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に観察し、出願商標を指定商品又は指定役務に使用した場合に引用商標と出所混同のおそれがあるか否かにより判断する。」と規定されています。
 このため、商標の類否判断は①外観、②称呼、又は③観念という3つのファクターを軸として行われます。

 外観とは、商標に接する需要者が視覚を通じて認識する外形をいいます。
 称呼とは、商標に接する需要者が、取引上自然に認識する音をいいます。
 観念とは、商標に接する需要者が、取引上自然に想起する意味又は意味合いをいいます。

 以前、「白い恋人」のパロディとして有名になった「面白い恋人」というお菓子がありました。「それパク」のネタバレは防ぎたいので、「白い恋人」と「面白い恋人」は類似するかどうかをみていきましょう。
 まず、「白い恋人」と「面白い恋人」は、「面」の文字が含まれているかいないかの差異があり、外観上は類似性が低いと考えられます。
 また、「面白い恋人」は「オモシロイコイビト」、「白い恋人」は「シロイコイビト」という称呼を生じます。「面白い恋人」と「白い恋人」は、「面白い恋人」の語頭音に「オモ」という称呼が生ずる点で差異があり、称呼上の類似性も低いと考えられます。
 更に、「面白い恋人」と「白い恋人」は異なる観念を想起させると考えられるので、観念上の類似性も低いと考えられます。
 そのため、「面白い恋人」と「白い恋人」は商標法審査基準の類否判断手法をそのまま適用した場合、類似性が低いものと考えられます。

 このように、パロディ商標であっても登録商標と類似している可能性が低いものも存在し、パロディ商標が登録商標に類似していないと判断されれば権利行使はできません。なお、「白い恋人」と「面白い恋人」の件については石屋製菓と吉本興業等との間で和解になったため、「白い恋人」と「面白い恋人」の類否について示されることはありませんでした。