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OpenAIはブランドガイドラインにより「GPT」の名称を守れるのか

 OpenAIは「ChatGPT」等に関してのブランドガイドラインを公開しました。このガイドラインによれば、「〇〇GPT」や「ChatGPT搭載の〇〇」等の表現を用いることが禁止されています。対話型AIの「ChatGPT」が爆発的に広がったことに起因して、「〇〇GPT」といった名称を用いる企業が増加しました。上述のガイドラインはこれらの企業に対抗するためのものだと考えられます。

 OpenAIは、「GPT」について商標登録出願を行っています。「GPT」の商標権を取得することで上記ガイドラインの裏付けを図る意図でしょう。もっとも、「GPT」の商標登録出願はChatGPTが公開された2022年11月30日よりも後の2022年12月27日なので、少し遅れ気味かなという印象はあります。この間に第三者が「GPT」の名称について商標登録出願していた場合、OpenAIは「GPT」の商標権を取得できません。

 「〇〇GPT」という名称を用いる企業が増えたことにより最も懸念すべきは「GPT」という名称の一般名称化です。このまま「GPT」を対話型AIの名称として様々な企業が用いれば、「GPT」は一般名称化してしまい、誰も商標権を取得できないものになってしまいます。更に、商標権を取得できたとしても、一般名称に該当する商標は権利行使ができないので、第三者が「GPT」を使用していても、その行為を規制することができません。

 一般名称化した商標の中で有名なものとして、「エスカレーター」があります。「エスカレーター」は元々米国のオーチス社の登録商標でしたが、階段式昇降機を表す一般名称と認識されてしまいました。日本ではヤマト運輸の「宅急便」が一般名称化の危機にありましたが、ヤマト運輸が「宅急便」は登録商標であり、一般名称ではないと世の中にアピールし続けたことで一般名称化を防止することができました。

 一般名称化は商標を用いて事業を行っている方は意識しておく必要があります。実は中小企業のお客様でも一般名称化してしまう事例は結構あります。特に近年はSNSにより急速に広まってしまい、一般名称化までのスピードが一昔前と比べて段違いです。「商標」として認識してほしい文言を用いる場合は、その文言を「」で囲ったり、文章で商標であることを示す等の対策を講じる必要があります。