中国で盗まれた日本企業の商標。実は日本でも商標泥棒がいます。
北京無印良品が日本無印良品に勝訴したニュースが話題になりましたね。このような商標問題は、大企業に限らず事業を営む者であれば誰しも巻き込まれうるものです。
中国では、「商標ビジネス」なるものが盛んに行われているようで、先取り的に取得した他人の商標を売買することで利益を得ている事業者も存在します。
なぜこのような先取り的な出願が認められているのでしょうか。
商標登録は、早い者勝ちで優劣が決まることが商標法に規定されています。つまり、実際に商標を使用していなくても、先に商標登録出願をした者が、商標登録を受けることができるというものです。そのため、事業をスタートし、ある商標を自分が使用していたとしても、商標登録を受けていなければ、誰かに出願され、自分がその商標を使えなくなるリスクは常に存在していることになります。法律自体がこのように規定されていることから、先取り的な出願によって商標登録されてしまうということですね。
このように規定されているのは、事業で使う予定のある商標を、事業準備段階で商標登録出願できるようにするためです。商標の使用開始時期によって商標登録の優劣をつけようとすると、似ている商標が存在する場合に、いつからその商標を使い始めたかの立証が困難である等の不都合があります。そのため、実際に商標登録出願を行った日付を基準として優劣をつけています。なお、米国、カナダ等では、実際に商標を使用していないと商標登録を受けることはできず、事業準備段階で商標登録を受けることはできません。
商標ビジネスを行っている商標登録出願の出願人は、自分で出願商標を使ったビジネスを展開するのではなく、商標権の販売を目的としているため、自分がその商標を使用する予定がありません。にもかかわらず、商標ビジネスを行う者が商標登録を受けることができるのは、日本や中国が、実際に商標を使っていなくても、商標登録を受けられる制度を採用しているからです。一方で、商標登録の要件に実際に商標を使用していることを定めている米国等の国では通用しません。
北京無印良品は、日本無印良品よりも先に中国で商標登録出願し、商標登録を受けていたため、日本無印良品は、北京無印良品に横取り的に商標登録されてしまったということですね。そのため、日本無印良品は、「無印良品」の商標を中国で使用及び登録できません。
実は、日本でも同じことが起きています
このような先取り的な出願は、日本でも行われています。昔話題になった「PPAP」に関する商標登録出願や、本ブログ記事「PPAPの衝撃再び・・・」でも例に挙げた「くまクッキング」等も、商標を使っている本人ではない第三者によって商標登録出願されています。
前述のとおり、日本は事業準備段階で商標登録できる法整備がなされているため、本来的には人目につくよりも前に商標登録出願を済ませておくことが好ましいです。商標問題は、誰しもが巻き込まれうるものの、さっさと商標登録してしまうことで大体のものは防げます。