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人の氏名を含む商標の登録は困難です! マツモトキヨシが商標登録できた理由とは

 以前、マツモトキヨシの音商標は商標登録の対象になるという記事を書きました。音商標の商標登録は通常の商標登録の要件と同じものを課されるので、商標法第3条、第4条の要件を充たす必要があります。

 ここで、マツモトキヨシの商標登録は商標法第4条第1項第8号の規定がネックとなっていました。商標法第4条第1項第8号は「他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)」と規定されています。  この規定によれば、自分の氏名の商標登録を行う場合、同一の氏名の人全員に承諾を得る必要があります。特許庁はマツモトキヨシが「他人の氏名」を含む商標と認定した上で、その他人の承諾を得ているという事実は認められないことから、商標登録を認めないと判断しました。

 なぜ登録が認められたのか?

 知財高裁では「音商標を構成する音と同一の称呼の氏名の者が存在するとしても、取引の実情に照らし、商標登録出願時において、音商標に接した者が、普通は、音商標を構成する音から人の氏名を連想、想起するものと認められないときは、当該音は一般に人の氏名を指し示すものとして認識されるものといえないから、当該音商標は、同号の「他人の氏名」を含む商標に当たるものと認めることはできない」とし、「取引の実情の下においては、本願商標の登録出願当時(出願日平成29年1月30日)、本願商標に接した者が、本願商標の構成中の「マツモトキヨシ」という言語的要素からなる音から、通常、容易に連想、想起するの、ドラッグストアの店名としての「マツモトキヨシ」、企業名としての株式会社マツモトキヨシ、原告又は被告のグループ会社であって、普通は、「マツモトキヨシ」と読まれる「松本清」、「松本潔、「松本清司」等の人の氏名を連想、想起するものとは認められないから、当該音は一般に人の氏名を指し示すものとして認識されるものとはいえない」と判示しました。

 マツモトキヨシの場合は、全国的に著名であることが評価され、「マツモトキヨシ」の音から連想されるのは人の氏名ではなくお店の名前であるとした上で、商標法第4条第1項第8号の「他人の氏名」に当たらないと認定されました。「他人の氏名」ではないので、カッコ書きの承諾も必要なく、商標「マツモトキヨシ」は無事商標登録されました。

 なお、商標法は人の氏名を商標登録の対象から除外することで人格権を保護しているものの、同一の氏名の人全員に承諾を得るというのは現実的ではありませんよね。この要件は現在緩和の方向で改正案が作成されており、今よりも柔軟に対応することができる時代になると思われます。