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エルメスのバーキンをモチーフとしたNFTを販売 商標法に触れる?

 先日、HermesのバーキンをモチーフとしたNFTのクリエイターに対して販売の中止を求めるというニュースをみました。NFTクリエイターは、バーキンに類似したバッグであるメタバーキンズを製作し、Openseaで販売したとのことです。メタバーキンズはエルメスのバーキンを毛で覆ったものであり、シルエットはバーキンにかなり近い形状をしています。

 商標権を侵害することになるのか?

 商標権の権利範囲は、①登録された商標と②指定商品又は指定役務によって決まります。②の指定商品又は指定役務とは登録された商標の用途を指します。指定商品又は指定役務は商標登録出願を行う際に願書に記載します。つまり、出願人の意思で任意に設定できるということです。
 なので、登録された商標を指定商品又は役務に使用する行為は商標権侵害に該当する一方、登録された商標を指定されていない商品又は役務に使用する行為は商標権侵害に該当しません。

 ここで、エルメスは物理的なバッグという商品に対しては商標権を保有していますが、デジタル商品に対しては商標権を保有していないという点が問題になります。
 エルメスの商標権侵害にかかる主張が認められるためには、物理的なバッグとデジタルデータのバッグが商品として類似している必要があります。

 日本において商品の類否は、①生産部門が一致するかどうか、②販売部門が一致するかどうか、③原材料及び品質が一致するかどうか、④用途が一致するかどうか、⑤完成品と部品との関係にあるかどうかを総合的に考慮するものとしています。
 そのため、少なくとも日本においてはエルメスの物理的なバッグとデジタルデータのバッグが類似の商品とはいえない可能性があると考えられます。

 近年のNFTの関心の高まりから、各アパレルブランドがメタバース内のデジタルデータに関する商品又はサービスについて、商標権の取得に向けた動きがみられます。
 NFTに対して効力の及ぶ商標権の取得は、NIKEの商標出願をベースに第9類、第35類、及び、第41類の商標権を取得しておくことが好ましいと考えます。これらの指定商品又は指定役務の範囲内であれば、問題なく商標権侵害を主張することができます。